麒麟新聞Giraffe Magazine
満月の日に発行する現在進行形の民間伝承誌
A live folklore magazine, published on every full moon.
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2026-03-03

生活の賜物

vol.2 3月号
この新聞がおおむね出来上がり、「デザインよし。文章よし。早く出したい。印刷するぞ。」という段階になって、ようやく編集後記に手をつけ始めたので、バタバタしている。今度から事前に書いておこうと思った。新聞を作るにあたって、ジラフ、そして SOY-POY の周辺にいる仲間たちに声を掛けて寄稿を依頼した。ここに寄稿してくれた人たちが、ページをめくりながらどんな顔するだろうと想像しながら編集する工程は喜びそのものだった。寄稿という形で手紙をもらい、編集という形で手紙を送り返しているような。気恥ずかしさもあり、それでも頼まなかったら形にならなかったものがこの紙面上にあるというだけで心が躍った。この新聞ではまさに、そんな残さなければ残らなかったであろうものを残したいと思っている。とてもローカルで、内輪の試みに見えるかもしれない。けれど、この極めてローカルな試みにこそ可能性を感じている。顔の見える人間が、何を考え、どんな生活の只中にいるのか。それを気にかけるという地味で地道な行為が持つ粘りっこい力を信じること。これが意外に難しい。過ぎていく日常の速さに埋没しかねない面倒で時間のかかる代物だ。それでも、締切を設け、それぞれがそれぞれの仕方で引き受けている生活の断片を、かき集めて、並べ、眺めてみる。文章、写真、漫画、なんでもいい。人の創作物を通じて人を知る。そんな小さな創作の輪を作ることを、新聞という使い古されたメディアを足掛かりに始めたい。否応なく時間は進む。創作は生活のリズムと呼応するように両輪で進む。日々感じた感動や気づき、創作というフィルターを通さなかったら、共有しえなかったであろうものをここに集めたい。だから特集のタイトルは「生活の賜物」とした。ここから「だったら私も」「だったら僕も」と次なる創作を生む起点になれば、あわよくば小さくも温度のある共同体のフォークロアとして…いや、この新聞が酒の肴になれば今はそれで十分。
編集長 勝俣泰斗